パニック障害の薬物療法

パニック障害の主症状は、動悸、胸痛、過呼吸、手足の痺れなどを伴うパニック発作ですが、それ以上に問題なのは、その発作が起きることを恐れて外出しなくなったり、乗り物に乗ることを避けたりする2次障害です。それによって、社会生活は著しく障害されます。
  かつてのパニック障害の治療は、アルプラゾラム(商品名:ソラナックス、コンスタンなど)などの抗不安剤の投与が中心でした。それでもおさまらない場合には、イミプラミン(商品名:トフラニールなど)など三環系抗うつ薬も投与されていました。SSRI(セロトニン選択的再取り込み阻害剤)と言われる新世代の抗うつ剤が発売されてからは、SSRIが治療の中心になっています。しかし、SSRIのみではなかなか症状をコントロールできないことも多く、抗不安剤を併用したり、中には三環系抗うつ剤を併用せざるを得ない場合もあります。ベンゾジアゼピン系といわれる抗不安剤の投与は、依存性があることからしばしば批判もされますが、使う量がどんどん増えていくことがなければそれほど心配することはないと言えるでしょう。実際の使い方としては、外出時などに「お守り替わりに」持参して、結局使わないで済ます場合もあるという方が多いです。パニック症状がコントロールできない時の2次障害の大きさを考えると、適正な量でのベンゾジアゼピン系の使用は、患者様の利益に適ったものと考えます。