強迫性障害の薬物療法

  珍しいようで、意外と多い疾患です。いろいろなタイプがありますが、不潔恐怖が中心の場合は、汚れや黴菌がつくことを過剰に心配して、何十分も手洗いをしたり、外出から帰る度に持ち物を消毒したりします。確認強迫が主体になるタイプでは、戸締りができたか、ガス栓や水道の栓を締めたかが気になって何度も確認します。戸締りに何時間もかかるために、結局外出できずに家に引きこもるようなケースもあります。強迫観念が主体になっているタイプでは「自分が人を殺したんでないか」「家族に悪いことがおきるのでないか」という、あり得ない観念にとらわれて、行動上の問題を起こします。
  昔から強迫性障害に対してよく使われてきたのはクロミプラミン(商品名:アナフラニール)という三環系抗うつ剤ですが、便秘・口渇・起立性低血圧などの自律神経症状が副作用として出現することがあるため、現在ではフルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックスなど)、パロキセチン(商品名:パキシルなど)といったSSRIと言われるグループの抗うつ剤がまず処方されることが多いです。対症療法的に抗不安剤が投与されることもあります。
  薬物療法以外の治療としては、行動療法と言われる治療があります。これは汚いと思っている対象に少しずつ触れさせたり、確認行動の回数や時間を徐々に少なくすることで症状の軽減を目指すものです。
  強迫症状の裏に統合失調症のような別の病気が隠れていることもあり、この場合は統合失調症に対する治療が必要です。また、発達障害がベースにあることもあり、この場合は薬物療法にも行動療法にもなかなか反応しないことが多く、発達特性に対応した工夫が必要になります。