発達障害の薬物療法

  知的障害や学習障害を別にすると、発達障害には、ASD(自閉症スペクトラム障害、この中にはアスペルガー障害が含まれています)とADHD(注意欠陥多動性障害)という2つの大きな山があります。実際には中核的な「障害」と「健常者」の間に幅広いグレーゾーンがあり、発達「障害」という言い方でなく「発達凸凹」という呼び方を好まれる先生もいらっしゃいます。健常者の中にもいくぶんかはASD的な特性や、ADHD的な特性があったりするものです。また、ASDとADHDの特性を両方持つ方も珍しくありません。
  ADHDについては、中核的な症状である注意障害に対して、アトモキセチン(商品名:ストラテラ)、メチルフェニデート(商品名:コンサータ)、グアンファジン(商品名:インチュニブ)という3つの処方薬があります。これらは高額な薬ではありますが、確かに多くの患者様で有効性を確認しており、多動性がおさまったり、集中力が高まったりという効果が出ることがあります。    
  ASDの中核的な症状である社会的コミュニケーションの障害や感覚過敏などに対しては、残念ながら治療薬はありません。ただし、ASDの方でも注意障害などADHDと共通の特性がかぶっている場合が多く、そうした場合には上記の薬が効果を発揮する場合もあります。
  また発達障害に伴って、うつ症状、幻覚妄想症状、強迫症状などが併発することがあり、それぞれの病態に応じた薬物療法が必要になることがあります。発達特性のある方は、薬に対しても過敏に反応することが多く、少量から徐々に増やしていく配慮が必要になります。